フィンランドの森を歩く

しとしと冷たい雨の東京です。
こんな天気の日はとくに
去年歩いたフィンランド の森を思い出す。
ヌクーシオ国立公園。
観光地としても有名な場所です。

でもしっかり森だと聞いたので
絶対行ってみたいと思ってた。
ヘルシンキ5日滞在予定が
直前にオーロラを見たくなり
ラップランドに出たので、
森へ行ける日はこの日しかなくなってしまった。
曇天の日曜日。

電車に乗り、バスに揺られ、
森の入り口とおおぼしき山道を入る。
国立公園だというのに
のっけからワイルドだった。
いきなりひとり遠く北欧の森へ突入。

静寂。
大きな鳥が横切る気配。
ふくろうだった?みたいなツバサ感。
ドキドキする。
けれどもすぐにワクワクに変わり、
そしてひとりぼっちなのに
ちっともさびしくない。
森に包まれている感じ。
空気はひんやりなのに
あったかい感じ。
ふしぎな体験だった。
森が人間を歓迎してる。
そんな感じがした。

湿地の中をいく。
森だけど湿地。
そのままある木々が水が美しい。
いやなものが何一つない世界。

公園なので道しるべがある。
それもちっともぎょうぎょしくなくさりげなく。
木のところにある
青白のシマの四角いやつ。
それがコースの印。
長さで3種類ある。
とガイドブックで見て知っていた。
この先にある公園事務所で地図をもらえるはず。
それを見て歩けばいいと思っていた。
ところが。
今日は日曜日。
公園事務所はお休みだった。
フィンランド は土日はなんでも休みになる。
公園まで!
でももう歩き始めてしまったから仕方ない。
確か黄色が初級者コースだったよね。
と思いながら歩き始める。

映画のロケとにもなった湖があらわれた。
すてきすてき。
曇り空にもいい感じ。

いい感じ!

どんどんハイテンションになって歩き続ける。

途中バーベキューしてる人たちもいた。
ベリーの季節には
取り放題!って聞いてたけど
もう一個もなかった。

けど
楽しかった!

少なくても途中までは。

歩き出して1時間くらい?
ポツポツ雨が降り出した。
でも私はすぐ終わる初級者コース。
さっさと行こう。
と歩くうち。
ざあざあ降りになってきた。

道しるべ通りに歩いていたら、
湖がいつの間にか終わり、
すれ違う人もいなくなる。
雨はどんどんひどくなる。
天気予報ではもう少しもつはずだったのに。
でも進むしかなかった。

道しるべ通りに歩いてきたのに
森ではない風景が出てきた。
秋吉台?みたいな岩ゴツゴツ地帯。
アップダウンもある。
でも進むっきゃなかった。
雨はますます激しくなる。

また森に入り、
とにかく四角い標をみっけては
どんどん歩く。
かなり必死になってきた。
Google マップを開けたくても
雨がひどくて開けられない。
開けられる場所に出ても
圏外になってる。

ヤバい。。急がなきゃ。
時間はまだ早いけど、
このまま日没になったら、
間違いなく凍死する。
と思ったら、恐怖のどん底になった。

ひたすら先に見えるしるべを探す。
ない‥と思って心細くなる頃に、
あらわれる。
とにかくあそこへ。
とまた、その次の標を追う。

また秋吉台になる。
ヤバい。
迷ってる?のか?
同じ場所、グルグルしてる?

初級者コースは、輪を描くコースで、
また出発のインフォメーションオフィスに戻るはずだった。
でも事務所らしきものは全く見当たらない。
とにかく秋吉台を転げそうになりながら
進む。

 

と、

向こうからリュックを背負った白人の女の人が
ひとり歩いて来た。
インフォメーションオフィスを聞く。
わからない、と言われ、焦る。
でもこの先に、地図がある、バス停もあるという。
キートス!と言って別れる。

よかった。
言われた通りに行くと、
また心細くなりそうになるあたり、
地図の看板があった。
でも見てみても、自分の場所からどう帰れるのか、
全くわからず。
でも近くにバス停、あるっぽい。
地図通りに行くと、大きな道に出た。
屋根のあるバス停だった。
よかった!

と行く先と時刻表を見ると、
駅に行くバスが、ある!
1時間に一本のが、あと30分くらいで!

本当にくる?

雨だれのバス停でひとり静かに待っていると、
スパニッシュ系と思しきカップルがあらわれる。
すっごい寒い雨ん中。
でも無事帰れそうな安堵感。

このとき
全ての恐れは
全て心の中にあるということを
森からおそわった。

あとから気づいたけど、
初級者コースと思ってしるべは
上級者コースで最長だった。
その途中にバス停がある‥ということを
そういえば前に読んでいて
その景色は
スマホの写真にも入ってたのだった。

つまり何にも迷ってなんかいなかった。
けれど
知らない風景、予想外の景色に
一瞬にしておそれモードに入り込んでたのだった。

それは日本に帰ってからも
日常そして人生の中ではよくあることで
でも

ちょっと先の小さなしるべを頼りにとりあえずそこまで歩く。
するとまたちょっと先に小さなあかりのようなしるべが必ずある。
必ずあるからみっけてとりあえずそこまで。
と進む。
そうして恐れず歩いていけばいいこと。。。
なのである。

まるで自然のまんまのようで
きちんと迷わないように最低限の人の手が入っている
フィンランドの国立公園のあり方にも感動した。

これはつい去年の10月末のこと。
すごく遠くのようで、
でもいつでもとなりにある。
そんな出来事をムネに
この一年は歩いてこれた。

かみさまのしわざはよくできてる。

たぶん、きっと、
これからも。