夏の虫

ちょっと前の朝の道で
びっくりするものを見つけた。

丸いかたまり。
カブトのサナギ?と思って
近づいてみたら

セミのサナギだった。

というか

動いていて

これから脱皮するために
這い上がってきたばかしのコが
どういうわけか
アスファルトの道路に
ほっぽり出されている状態。

車も通る道だよ。
ええー!って思って、
草むらに隠そうかと思ったけど、
もし人間が触ってしまったがために
どこか傷ができてしまってもいけないし

何もできないまま
通り過ぎた。

どうしたかな。
その辺りを通るたび、
木の上のセミの声を見上げてる。
ここにいるよ
と言ってもらってることにして。

これはまた別の日に会った虫。
ウスバカゲロウだよね。
その儚さを踊ると
ダンスのタイトルにしていた友人もいた。
けれど
ウスバの幼体は、
なんとアリジゴクだと
調べてみて知るショウゲキ。
さらに
アリジゴクは後ろにしか進めないという
名前以上におそるべき生態。

いろんな生き物がいる。

後ろにしか進めないのは、
アリジゴクにとっては
生きる術なのだろうか。

ウスバカゲロウは
そのはかない名前のせいか、
一日しか生きないと思いこんでいたけれど、
1ヶ月生きるらしい。セミより長い。

でも。
セミは、1週間の地上生活よりも
天敵もいない静かな長い地下生活にこそ、
もしかしたら
至福なトキメキがあるのかもしれないと
言ったのは、
私に絵本のすべてを教えてくれて、
フリーになりなよとそそのかした
某社編集部の上司Kさんだ。
某美大油絵科出身なのに
油絵具の匂いが嫌いと言っていた
Kさんはもう長い間、
オシャレな街の病院のベッドで寝たきりで,
意思表示ができない生活になっている。
いろいろ聞きたいこと、
見せたいこと、
話したいことはまだまだたくさんあるのに。

でも直接言葉で触れ合えることが
すべてではないのかもしれない。

セミのように
思いもよらない感覚もあるのかもしれない。


毎年セミの声を聞くたび
思う。

コロナ落ち着いたら、
Kさんとこにみんなで会いに行きたいな。